気候変動への対応

TCFD提言に基づく開示
当社では、気候変動が事業にもたらすリスクと機会を具体的に把握するためにシナリオ分析を実施しています。
シナリオ分析では、以下のとおり、1.5℃シナリオおよび4℃シナリオの2つのシナリオを想定し、2030年時点で事業に影響を及ぼす可能性のあるリスクと機会の特定と影響度について評価しています。
戦略
気候変動が事業にもたらすリスクと機会を具体的に把握するためにシナリオ分析を実施しました。1.5℃シナリオおよび4℃シナリオの2つのシナリオを想定し、2030年時点で事業に影響を及ぼす可能性のあるリスクと機会の特定と影響度について評価し、対応策を検討しました。
1.5℃シナリオにおける当社グループの主なリスク・機会としては、社会全体が脱炭素社会に移行する中において、顧客ニーズが変化し、当社の取扱製品の一部である内燃機関向け関連製品、化石燃料関連製品等において減少が想定される一方で、EV関連製品や再生可能エネルギー関連製品、また、物流関連製品への移行需要等が当社のビジネスにおいてプラスの効果が期待できると想定しております。また、炭素税の導入(2030年で140ユーロ)が想定されており、その場合は、当社の購入エネルギー(電力・ガソリン等)の負担上昇や、取扱製品の原材料価格の上昇を通じた仕入価格の上昇等がリスク要因として考えられます。顧客ニーズの変化については、脱炭素社会への移行を支援する製品の取扱いを増やし、事業機会として捉えています。炭素税の導入については、再生可能エネルギーの使用や、営業車のEV化等を進めることを想定しております。
4℃シナリオにおいては、主に物理リスクを検討した結果、台風の強度の増大化、豪雨の発生に伴う洪水等による、当社保有設備や在庫等への影響、サプライチェーンの寸断などによる仕入れ・販売への影響が想定され、また、平均気温上昇による労働生産性の低下もリスク要因として特定いたしました。風水害リスク等については保険等でカバーすることを想定しています。また、サプライチェーンの影響については取引先と連携して対応を進めてまいります。
いずれのシナリオにおいても、当社グループの事業における気候変動リスクに対するレジリエンスは確保されていると考えています。引き続き、シナリオ分析および財務インパクトの影響の精緻化、リスク・機会および対応策の経営計画への具体的な反映を通じて、気候変動対応を進めてまいります。
シナリオ分析の条件・定義
シナリオ名 | 世界観 | 参考シナリオ |
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1.5℃シナリオ | 持続可能な社会を実現する2050年ネットゼロに向けて、厳しい政策がとられ技術革新が進む。21世紀末の温度上昇は1.5℃未満で安定する。 |
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4℃シナリオ | 現在実施されている政策がそのまま継続され、追加的な措置は行われない。21世紀末の温度上昇は2℃を上回り、気候変動の影響を大きく受ける。 |
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影響度 |
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大:当社への影響が大きい 中:当社への影響は一定程度 小:当社への影響はほとんどない |
影響時期 |
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短:1~2年以内に発生 中:5年以内に発生 長:20年以内に発生 |
シナリオ分析に基づくリスク・機会の認識と対応策
機会/リスクの分類 | シナリオ | 項⽬ | 当社グループにおける具体的な影響 | 影響度 | 影響時期 | 対応策 | |
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移行 リスク |
政策・ 法規制 |
1.5℃ | 脱炭素の導入 | 炭素税の導⼊に伴い、事業所の光熱費や営業⾞の燃料費が増加する | 小 | 短〜中期 |
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排出量報告義務の強化 | GHG排出量の第三者認証費⽤などコンプライアンス費⽤が増加する | 小 | 短〜中期 |
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リサイクル規制 |
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大 | 中期 |
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テクノロジー | 次世代技術の進展 |
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小 | 短〜中期 |
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市場 | 原材料コストの増加 | 再⽣可能な原材料への転換に伴い原価が上昇する | 大 | 中期 |
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評判 | 顧客/投資家の評判変化 |
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- | 中期 |
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物理 リスク |
急性 | 4℃ | 異常気象(⾃然災害の激甚化) | ⼤規模災害に伴うサプライチェーンの⼨断、販売活動の停滞、顧客⼯場の停⽌・減産により、売上が減少する | 小 | 中〜長期 |
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洪⽔などの災害により、在庫資産等の保有資産が毀損する | 中 | 中〜長期 |
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慢性 | 平均気温の上昇 | 気温上昇による労働環境悪化に伴い従業員の業務効率が悪化する | 中 | 中〜長期 |
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機会 | 資源効率 | 1.5℃/ 4℃ |
物流・⽣産効率化 | 在庫拠点の再編および物流効率化に伴うエネルギー使⽤量の削減 | 小 | 中期 |
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エネルギー源 | 省エネ化・脱炭素化 | 営業⾞をEV等エコカーに代替することによりエネルギーコストを削減 | 小 | 短〜中期 |
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製品とサービス | 消費者・顧客の嗜好の変化等による低炭素排出商品およびサービスの開発・拡⼤ |
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大 | 短〜中期 |
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市場 | 顧客/投資家の⾏動変化 |
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- | 中期 |
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財務影響の試算例
シナリオ名 | 前提条件 | 財務影響額 |
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1.5℃シナリオ |
2030年のカーボンプライシング:140USD/t-CO₂ (IEA「World Energy Outlook 2024」より) |
約1,500万円の費用 |
4℃シナリオ |
2030年のヒートストレスによる労働生産性低下率:1.8% (Climate Analytics「Climate impact explorer」より) |
約1億円の人件費上昇 |
2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオを考慮した組織戦略のレジリエンス
1.5℃シナリオ・4℃シナリオのいずれのシナリオにおいても、当社グループの事業における気候変動リスクに対するレジリエンスは確保されていると考えております。引き続き、シナリオ分析および財務インパクトの影響の精緻化、リスク・機会および対応策の経営計画への具体的な反映を通じて、気候変動対応を進めていきたいと考えております。
脱炭素に向けた移行計画/ロードマップ/行動計画
現在
2050
目標 | 2030年までにGHG排出量50%削減 | 2050年カーボンニュートラルの達成 |
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GHG排出量 の削減 |
オフィスでの取組
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営業車における取組
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サプライチェーンの取組
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資源の有効活用 |
サーキュラーエコノミーへの取組
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ビジネスの移行 |
サステナビリティ・脱炭素製品への取組
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市場評価 |
サステナビリティ情報の開示
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気候変動への適応 |
継続的なリスク評価
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働きやすい環境整備
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ガバナンス
気候変動を含むサステナビリティの諸課題については、「サステナビリティ推進委員会」において議論し、重要事項は経営会議を経て取締役会に上程する体制となっています。気候変動に関連するリスクおよび機会については、シナリオ分析を基本として識別し、分析・評価しています。
(→サステナビリティガバナンス参照)
リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ推進実行チームを中心にサステナビリティ関連リスクの特定・評価および機会の分析を実施しております。サステナビリティ関連リスクおよび機会のうち、気候変動に関連するリスクおよび機会については、シナリオ分析を基本として識別し、分析・評価しております。特定・評価された重要なリスクおよび機会は適宜、サステナビリティ推進委員会から取締役会・経営会議に報告する体制であり、リスクおよび機会の共有をすると同時に、リスクについては適切な対応策の検討が行われており、機会については必要に応じて経営戦略および対処すべき課題に反映することとしております。具体的には、サステナビリティに関するリスクのうち、経営戦略上・事業運営上のリスクについては必要に応じて経営会議や取締役会において審議しており、適宜リスクマネジメント委員会と連携しつつ、当該リスク事象の発生の回避および発生した場合の対応策を検討しております。また、機会についてもサステナビリティ推進委員会が主導し、事業部門の取組をサポートしております。気候変動に関する機会については、お客様ニーズに即した脱炭素関連などの新しい商品開発による販売機会の拡大に努めております。
指標と目標
当社グループでは、気候変動に関連するリスクと機会を評価する指標として、当社グループのGHG排出量(グループの国内全拠点におけるScope1、Scope2排出量)を採用しております。当社グループのGHG排出量の推移は下記のとおりであり、2024年度は2013年度比で25.8%の削減を達成したものの、2023年度以降、各拠点の活動増加に伴い増加傾向となっております。再生可能エネルギーの活用などの脱炭素に向けた各種取組等により2030年度には2013年度比50%削減、2050年にはカーボンニュートラルの達成を目指します。
2023年度より、自社の排出量(Scope1、Scope2)に加えて、サプライチェーンにおける排出量(Scope3)の算定・把握を行っています。2024年度は、大型設備装置の完工等により排出量が増加しましたが、引き続きScope3の算出精度の向上に努め、Scope3の削減目標についても検討を進めてまいります。
(GHG排出量 Scope1、2の削減目標と実績の推移)
排出量(t-CO₂) | 削減率(%) | |||
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うちScope1 (注1) |
うちScope2 (注2) |
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2013年度 実績 |
1,293 | 710 | 583 | - |
2021年度 実績 |
968 | 513 | 456 | 25.1 |
2022年度 実績 |
928 | 533 | 395 | 28.2 |
2023年度 実績 |
939 | 537 | 402 | 26.9 |
2024年度 実績 |
960 | 562 | 398 | 25.8 |
Scope1とは、自ら排出した温室効果ガスの直接排出量と定義されております。従って、当社グループの国内全拠点の燃料使用量(ガソリン、軽油、重油、都市ガス、LPG)から算出しております。
Scope2とは、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出量と定義されております。従って、当社グループの国内全拠点の電気使用量から算出しております。
(GHG排出量 Scope3の実績の推移)
カテゴリ | 排出量(t-CO₂) | ||
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2023年度 | 2024年度 | ||
Scope3 (注3) |
カテゴリ1 :購入した製品・サービス | 531,315 | 570,580 |
カテゴリ2 :資本財 | 1,953 | 2,070 | |
カテゴリ3 :Scope1,2に含まれない燃料およびエネルギー活動 | 200 | 204 | |
カテゴリ4 :輸送、配送 | 637 | 873 | |
カテゴリ5 :事業者から出る廃棄物 | 265 | 305 | |
カテゴリ6 :出張 | 1,811 | 1,603 | |
カテゴリ7 :雇用者の通勤 | 251 | 276 | |
カテゴリ11:販売した製品の使用 | 217,220 | 294,244 | |
合 計 | 753,651 | 870,155 |
Scope3とは、サプライチェーンにおけるScope1,Scope2以外の他社の排出量と定義されております。従って、当社グループ(海外含む)の活動に伴う他社の排出量を、カテゴリ別に算出しております。