SOLUTION STORY

CONVEYOR DEVELOPMENT

PROJECT OVERVIEW プロジェクト概要

物流業界では人手不足が進み、オートメーション化への機運がますます高まっている。
こうした時代のニーズを背景に、今回ツバコーが取り組んだのが省人化・メンテナンス性向上への大きな一歩となる新しいコンベヤの開発である。
開発にあたっては、これと見込んだ機械部品をコーディネートして組み合わせるエンジニアリングに挑戦。
数々の問題にぶつかりながらもメーカーと共に頭を悩ませ、試作機が完成した。まだ課題は残されているが、確かな手応えを感じている。
商社という枠を超えて製品開発に乗り出した皮の奮闘を追った。

PROFILE

動力伝達事業

皮 恩京Pe Ungkyong

2019年入社。物流業界や水処理プラント業界等を主に担当し、機械部品の提案を行う。水処理プラントメーカーに初のドイツメーカーの駆動部品を提案し、標準搭載を実現するなど、海外メーカーの部品も幅広くカバー。今回のプロジェクトでは、機械部品の調達のみならずエンジニアリングにまで関わっている。

商社が挑む“ものづくり”
エンジニアリングで顧客の課題を解決へ

プロジェクトがスタートした背景について教えてください。

当社の重要なパートナーである株式会社椿本チエイン様と当社とで、株式会社椿本チエイン様の独自商品である「モジュラーチェーン」の拡販を協議していました。モジュラーチェーンは、コンベヤに利用するプラスチック製のチェーンです。従来のベルトコンベヤはベルト部分が摩耗しやすく、切れると専用の接着剤で貼り合わせなければならないため、メンテナンス性に問題がありました。しかしモジュラーチェーンなら、側面のピンを抜けばチェーンの切継ぎができ、部分補修を簡単に行えます。
この優れたメンテナンス性をユーザー様に訴求したいと考えました。

どのようなユーザー様のニーズに合致したのですか?

配送センターや倉庫、空港等に搬送システムを納入されている物流業界の製造メーカー様です。これまでのお付き合いの中で、コンベヤのメンテナンス性向上や省人化を模索しておられることを把握していました。そこでモジュラーチェーンをご提案したところ興味を示され、「課題を解決する次世代コンベヤができないだろうか」とご相談いただいたのです。ツバコーのものづくり力を発揮するチャンスだと思いました。

商社なのに“ものづくり”ですか?

はい。本来私たちは機械部品を販売する部隊なのですが、さまざまな部品メーカーや設備製造メーカーとのネットワークがあるため、機械部品をコーディネートして組み合わせるエンジニアリング能力も持ち合わせています。
今回もチェーンメーカーとモーターメーカーの3社で膝を突き合わせて製品開発を進めていきました。

全ての要件を満たすコンベヤ開発の
ためにメーカーと試行錯誤を繰り返す

既存のコンベヤにモジュラーチェーンを組み合わせたのですか?

いいえ。お客様からご希望を伺う中で、コンパクト性も追求したいというニーズが新たに見えてきました。しかし、従来の駆動部品では機械がコンパクトにならないため、駆動部の見直しが必要になったのです。
お客様からは、駆動部に組み合わせる最適なモータローラはないかというご相談を受けました。

どのような提案を行いましたか?

モジュラーチェーンとモーターローラを組み合わせるには、チェーンに噛み込ませるスプロケット付きでなければいけませんが、日本のメーカーでは取り扱いがありません。
ただ、私たちは海外のメーカーとも日頃からお付き合いをしているので、すぐに懇意にしているメーカーとコンタクトをとりました。すると見込み通り、組み合わせが可能なモーターローラがあることが分かりました。

課題を解決できるコンベヤができると?

はい。モジュラーチェーンの優れたメンテナンス性に加えて、ローラ自体がモーターの役割を果たすモーターローラを採用することで小型化が図れます。
また、ローラが細いので乗り継ぎも安定し、無人でも使えるような搬送システムを実現できると考えました。

ツバコーのシーズを駆使し
お客様のウォンツとニーズに応えたい

開発で苦労した点はありますか?

チェーンとローラの組み合わせには苦労しましたね。
モーター径が大きくなればトルクも大きくなり能力は向上しますが、同時にコンベヤ自体も大きくなってしまいます。
必要な能力とコンパクト性という相反する二つの要素のバランスをいかに取るか。これには頭を悩ませました。
モーターローラを使ってモジュラーチェーンを回す製品自体が流通していないので、メーカーと一緒に、どうすればコンベヤとして成立させられるか、そして小型化・軽量化を実現できるかという設計検討を繰り返しましたね。現在はデモ機の第一号が完成したところです。

デモ機を試してみて、手応えは感じられましたか?

搬送テストを行なったところ、小瓶でも転倒することなく乗り継ぎができたので、安定性に非常に優れていると感じました。
静音化や軽量化といった課題は残っているのですが、今後の開発過程で解決していきます。
理想のイメージは「置きポン」です。買った商品が段ボールで届き、2、3人で運んでポンと置くだけで使える。実現すれば、設置からメンテナンスまで極力人が介さないコンベヤが生まれます。そうなれば、今後の物流業界の省人化に大きな貢献ができると期待しています。

お客様からの反応はいかがでしたか?

写真と動画でお見せしたところ、非常に反応が良かったですね。次世代コンベヤを実現できそうだと前のめりでご覧いただきました。
近々、工場見学ツアーを計画して、実機をご覧いただく予定です。
実際に目で見ていただければ新しい課題も見えてくるでしょうから、そこからさらにブラッシュアップを重ねていきます。

この経験をもとに、今後はどんなプロジェクトを手掛けたいと思っていますか?

お客様のウォンツとニーズに対して、幅広い商品の知見や国内外のメーカーとの調達ネットワーク、商品をユニット化する技術力といったシーズで応えることができるのがツバコーです。私自身はまだまだ勉強中の身ではありますが、このシーズを駆使して、お客様のご希望に寄り添い、課題を解決する提案を行いたいと思います。